「meeting again 7」
ユノに手紙を書くのは何度目になるだろう
数か月前に先に行ったユノは
ここではヒョンではなく先輩になり
手紙の文面もそれなりの敬語を使わなくてはならず
よそよそしくなってしまうけど
僕たちの気持ちは通じているものと信じて
他人行儀な文通を互いに何度かやりとりをしている
なかなか本音を書けない事が歯痒くもあるが
それはユノの返事を見ると
充分承知してくれているようで
その見慣れた文字を見るたびに僕はほっとした
そして暗号とまではいかないけれど
二人の仲でしか分からない言語があって
僕はユノからのそんな文面を見るたびに口元を綻ばせた
ここで生活してみて
改めて実感させられたこと
日常の生活とは極上のものであり
社会の食物は神食であるという事
人は人を守るためには
厳しい試練も甘んじて受け
我が身をもって尽くし
心身共に自身を磨き強く励まし続ける事
負けない自分でいられるように
愛する人達を守れるように
そして
それ以上に身に染みて実感した事は
会いたい人に
会いたい時に会えない事だ
この感情を僕よりも先に経験して
この思いを数か月前から感じでいたであろうユノ
今、ユノが恋しくてたまらない
一緒にいた事が当たり前だとは思ってはいなかったけど
10年以上の間、人生の大半を共にしてきたユノと
これだけの時間離れるのは今回が初めての事だから
長年交際していた恋人同士が離れる時も
こんな気持ちになるのかな……
ユノがあの時
一言だけ
"残った時間を充実させて使え"
と僕に言った言葉
自分の話をほとんどしなかった理由も
今ようやく身をもって分かった気がした。
・・・ユノ
とても会いたいよ・・
勿論、手紙にはそんな感情的な内容を書くわけではなく
先日はこんな事があったとか
とても楽しい人がいるとか
今日の食事は美味しかったとか
そんな日常の話しがほとんどで
それでも気が付くと便箋にはいつもぎっしりと
隙間がないほどの文字が埋め尽くされていて
読み返しては消してと
そんな事を繰り返しながら数日間に渡って書いたものも何枚かあった
そして文章の最後にはいつも必ず
「元気で過ごしていてください
御身体にはくれぐれも気を付けてください
健康をお祈り致します」
と、付け加えた。
ユノに手紙を書き終えた後
消灯の時間が迫り身支度を整える
翌日の天気が気になって
就寝前には窓の外を覗くのが毎日の癖になっていた
小さな窓の僅かな隙間からヒューッと冷たい空気が吹き込んで
一瞬頬を刺して通り抜ける
今朝から降り続けていた雨は
いつの間にか重たい雪に変わっていた様だ
・・・冷えるわけだな……
隙間からハラハラと吹き込む雪を手のひらでそっと捕まえて握り締め
瞬く間もなく手の中で溶ける結晶を見詰めながら
ユノと過ごしたあの日の事を思い出す
「うーーん、旨いっ!
やっぱり火鍋あったまるなぁ~」
「はいっ
ここの肉は本当にやっべーです!
美味しくていくらでも食べられちゃいますねぇ
おかわりいきましょ♪」
「夢みたいだ…」
「え?」
「今こうしてこんなにうまい肉を
チャンミナと一緒に食べてる事がさ…
なんか夢を見ているみたいだなって」
ユノは持っていた箸と匙をテーブルに置くと
グラスに注いであったスプライトを一気に飲み干して
にっこりと微笑みながら僕の前にグラスを差し出す
「一杯だけ呑もうかな」
「うんっ」
コクンと頷きながらにこにこと笑って
ご機嫌な僕は
ハルビンビールをユノの細長いグラスに
溢れるくらいいっぱいに注ぎ込んだ
愛のポチポチいつもありがとうございます!
更新の励みになってます感謝感激




今日も見てくれてありがとうございます(*^_^*)
次回が最終話になる予定でふ
短編まったりなお話で飽きちゃったかもしれないけど
も少しお付き合いくださいね~^^
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