リビングのドアを開けると
仄かに甘い香りが漂って心地よい空気がフッと流れる
いつかどこかで嗅いだような
懐かしい匂いに僕は鼻をひくひくさせた
「・・・・この匂いは」
「えへへ
懐かしいでしょ?」
「この甘い匂い・・これ・・
いつか行った南国の香りと同じですね
えっと…プルメリアだったかな?」
「あれ」
手を伸ばしてテープルの上を真っ直ぐ指差すユノ
その先に目をやると
少し大きめのベージュ色をした鉢植えがひとつ
テーブルの横に置いてあった
「え?
あれ??
花…ないけど……」
それは
幹が植え付けられ根が活着した
まだ花の欠片も見当たらない鉢植え
ユノは細い幹を指先で軽く突っつきながら
口角を上げて視線を横に流した
「これこれ」
首を伸ばして覗いてみると
鉢植えのすぐ後ろにはアロマキャンドルが置いてある
どうやらエキゾチックなこの香りはその匂いらしい
「あ…
アロマキャンドルの匂いだったんだ…
いい香りですね。
プルメリアの香り?」
「うん。
何となくこの幹から匂いが出てるように思えるだろ?
まるで花が咲いてるみたいにさ」
「うん……でも
何で幹だけの鉢植を?
花が咲いてるのもあったでしょ?」
「咲いている花は時期に枯れるだろ」
「そうだけど、、」
「まっ!いいじゃん。
とりあえず乾杯しよう」
「はいっ
あ……でも、食材大したものないし…
ここのとこ撮影で家あけること多かったから
冷蔵庫空っぽなんです…
僕やっぱりちょっとそこまで買い物行ってきます」
目深にキャップを被って玄関に向かおうとすると
ユノに手首を掴まれる
「まぁ、いいから座れよチャンミナ」
そう言って僕の肩に手を掛けると
2、3度軽く揉みながらそのままリビングのチェアーに座らせられた
「ヒョン??」
すると、ユノは持って来た自分のリュックの中からガサゴソと
エプロンを取り出しては不慣れな手つきで腰に巻く
紐をキュッと強く縛ってポンポンと拳で自分の胸を叩くと
ちょっと仰け反りぎみに胸を張り僕を見てはどや顔をする
「今日は俺がチャンミナに作ってあげる」
「え?ヒョンが?
あ、でもほんと何もないですよ」
「 ジャジャーン 」
勢いよく冷蔵庫をユノが開けると
そこには食材が乱雑にいくつか積み込まれていた
「これ、ユノヒョンが?」
「うん
さっき買ってきた。
ほんとに冷蔵庫の中、何も入ってないんだな
チャンミナにしては珍しいから驚いちゃった」
「はい
ここのとこ自炊する時間がなくて、、」
「だろ?
今日は俺がスペシャルディナー作るからさ
期待してね♪」
・・・・ユノが
・・・スペシャルディナー
「あ、それじゃ、僕も手伝います!」
「だめ。
作るものもう決まってるからチャンミナは座ってて」
「でも……
何作るの?」
「ひーみーつ! 」
・・・気持ちは嬉しいけど
・・・・・・・・
「なに?なんか不満?」
「いえ、
不満なんてことある訳ないじゃないですか!
ただ……その、、
ヒョンにだけやらせるんじゃ悪いですよぉ
だから僕も一緒に手伝うから」
「そんな気使うなって!
チャンミナはゆっくりしてろよ
とびっきりの自信作食べさせてやるから」
「……ほんとに
僕、何もしなくてもいいの?」
「いいからいいから!
チャンミナはここで俺のこと見守ってて!なっ
チュッ♡ 」
「あ////////」
・・・・ってこのタイミングでキス
しかも口・・・
まぁ・・一瞬の軽い挨拶みたいなキスだけど。。。
でも
やっぱり照れる/////
「チャンミナ」
「はい///」
「何でもない♡
ただ呼んでみただけアハッ」
「もうっ
何ですか急に////」
いたずらっぽく微笑みながら
キッチンの向こうでチラチラとこちらを見てはご機嫌なユノ
まるで暮らし始めたばかりの新婚夫婦の様に
目が合うたびに僕達はニヤけが止まらず
互いの名前を無意味に何度か呼び合った
久しぶりの二人だけの時間
こんな些細な事が
僕達はとても幸せだった
愛のポチポチいつもありがとうございます

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