「遅くなっちゃったな…」
早朝からの撮影
思っていたよりも収録が長引いてしまい
外に出ると空はすっかり暗くなっていた
着替えを済ませて最後にもう一度だけ台本の予習をする
「お疲れ様」
「お疲れ様でした!」
「チャンミンさん
明日は夜の撮影になるけど
聞いてるよね?」
「はい、聞いてます。
21時には到着するようにします」
「よろしくね。
明日は長丁場になるからしっかり寝ておく様に」
「はい
明日もよろしくお願いします!」
監督とスタッフと別れた後、早歩きで駐車場に向かう
周りに人気がないのを確認してから
猛ダッシュで車に乗り込み急いでスマホを取り出し電話をかける
「もしもし」
「おぅっチャンミナ
お疲れさん」
「遅くなっちゃって…
今、終わったところだけどすぐそっち向かいますから
今からでも大丈夫?」
「だめ」
・・・・遅すぎたか
やっぱり・・・
「…ですよね
ちょっと遅すぎちゃいましたね僕…
ヒョンは明日忙しいし…」
「いいから早く帰ってきて」
「え?」
「俺、今
チャンミナの部屋でお留守番してるから」
「ヒョン
僕の部屋にいるの?」
「うん
待ちきれなくてこっち来ちゃった
ついさっきねアハハ」
「分かりました!
今からすぐ帰るから待ってて」
「あ、チャンミナ
急がなくていいからな
気を付けて帰ってこいよ」
「はい!
気を付けながら急いで早く帰ります!」
「買い物もしてこなくていいからね」
「え、でも
夕食はどうしますか?外で食べる?
ヒョン今日は家でゆっくり食べたいでしょ?」
「いいから。
そんな心配しないでとにかく気を付けて帰っておいで」
「うん…でも…」
「なっ
俺は早くチャンミナの顔が見たいんだから。
1分1秒が大事だからさ」
そう
今の僕達にはこの僅かな秒刻みの時間さえも
とても貴重で大切な一時だった
今日は仕事が終わり次第
僕の方からユノの故郷 へ出向くはずだった
でも撮影中に思いもよらぬハプニングがあり
結局はこんな時間に…
ユノが僕のところに来てくれて居なかったら
会っていられる時間はもっと限られてしまっていただろう
急がなくていいと言われても高鳴る気持ちは止められない
車を降りるなり走り出し
マンションのエレベーターに乗り込む
部屋の前まで到着すると一端足を止めて呼吸を整え
僕はドアを開けずに部屋のブザーをそっと鳴らした
ピンボーン
カチャ
ブザーとほとんど同時にドアが開く
気配を感じて待っていたんだろうか
真っ白なVネックの半袖のシャツに黒のハーフパンツ
少し乱れた前髪から見えるきらきらした瞳
白い歯を見せてにっこり微笑みながら
ユノは僕を出迎えてくれた
「ヒョンただいま
遅くなってごめ・・・
あ・・・」
顔を見るなりユノはその場で僕を強く抱き締めると
「急がなくていいって言ったのに……
こんなに息を切らして…」
そう言って僕の身体をぎゅうっとする
「ヒョン…
あの…僕…汗臭いよ
まだシャワー浴びてないし
ヒョンのシャツ汚れちゃうかも…」
「汚してくれよ…
チャンミナの汗で汚れるならいくらでもいいよ」
「ヒョン…」
僕達がこうして二人きりで会うのは久しぶりだった
手を伸ばせばいつも傍にあった当たり前だったこの温もり
ほんの少し離れていただけなのに
とてもいとおしくて仕方がない
しばらくその場で抱き締め合いながら
互いの温もりを確認しあうと僕達は
ようやく安心したように額と額をくっ付けては瞳を合わせた
「チャンミナおかえり」
「ただいまユノヒョン」
照れ臭そうにクスッと笑って互いに手を取り合い
僕達は部屋の中に入っていった
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短編まったりなお話です。
可能な限り更新していきますね(*^_^*)
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