1985年に来てから二日目の朝
僕は目を覚ます
少し早めに起きて
9時には出勤するユノさんに朝食をつくった
台所で支度をしていると
チャンドラが足元で尻尾を振っておねだりをする
「今チャンドラのもつくってあげるからね
あんまり騒ぐとユノさんが起きちゃうから
ちょっとの間静かにしててね」
「ワンッ!」
「こらこら
返事も静かにしないとダメだろ
いい子だから少し待っててね」
ぐっすり眠っているユノさんを
ぎりぎりまで寝かせてあげたくて
なるべく音を立てずに出来上がった食事をテーブルにそっと運ぶ
数分後
ワカメスープの匂いに気づいたのか
ユノさんが目を覚ます
「んっ・・・・おはようチャンミン
なんだかいい匂いがす・・・」
テーブルに用意されている食事を見て
「うわぁーーーーー
チャンミンこれつくってくれたの??」
「あ、はい
僕も少しはその...
役に立たないといけないと思って......
今はこんな事しか出来ないですけど.....」
「うわぁ~~
ありがとうチャンミン嬉しいなぁ・・・
朝食なんて俺何年ぶりだろ~
おっ、チャンドラのもまたつくってくれたの?」
「はい
お口に合うといいですけど」
「いただきまーす!」
寝起きのままソファーから降りて
フリースのパーカーを羽織り
ちょこんと正座をして手を合わせるユノさん
この数年間
組織の存在に脅かされながらも朝晩限らず仕事に追われ
合間にはオーディションのためのレッスンと…
不規則な生活がずっと続いていたのだと思った
目を細めながら嬉しそうに朝食を食べるユノさんの姿は
本当に幸せそうだった
「美味しい!美味しいよこれ!
チャンミンは料理が本当に上手なんだなぁ
朝からこんなに贅沢していいのかなぁ俺♪」
ぱくぱくと次から次へとご飯を口に運ぶユノさん
お茶碗とお箸を手から離そうとしない
その横でチャンドラも勢いよくガツガツと食べる
「ちゃんと噛まないとだめですよ
はいお茶もどうぞ」
「ありがとうチャンミン
チャンドラ!
お前もちゃんと噛まなきゃダメだぞ
ちゃんとチャンミンにお礼言ったか?」
「ワン!」
「アハハ
元気ですねチャンドラ
食欲旺盛だ」
「俺も食欲旺盛!
やる気が出てきたぞーー
今日も一日頑張ろうっと!」
ユノさんは朝食を済ませるとシャワーを浴びて
作業服に着替えて出勤の準備をした
玄関口で僕とチャンドラはお見送り
「じゃ、行ってくるね
はいこれ」
「え?これ」
差し出されたのは1万円札2枚
「少ないけど持ってろよ
何かあったらいけないから。」
「いいですよぉ!
こんな貰えませんよ!」
「じゃ待ち合わせ場所までどうやって来るの?
お金無かったら電車も乗れないぞ」
「あ・・・
ですよね。。。。
じゃ、1万円だけお借りします。。。」
僕の手を取り1万円札2枚を握らせると
「いいから!
予備にもっとけって」
「...本当にすいません
こんな事までしてもらっちゃって...」
「あ、今日の待ち合わせ場所は後で電話するから
ツーコールしたら俺だからチャンミン電話に出てね」
「ツーコール?
あ、はい分かりました。
あの....ユノさん
僕、ここのお掃除しててもいいですか?」
「掃除?
いいよ悪いよそんなの
チャンミンはお手伝いさんじゃないんだからさ
ゆっくりしてなよ
あ、暇つぶしにゲームとか漫画もあるし
ルービックキューブとかやった事ある?
何でも使っていいんだからね」
「ありがとうございます
でも、僕...掃除するのわりと好きなんです
あ、勿論ユノさんが嫌だって言うならしません」
「そっか。。。。
チャンミン何かしないと俺に悪いって思ってるんだよな。。。
それなら掃除頼んじゃおうかな
簡単でいいから無理すんなよ」
「はいっ!
あとこれ良かったら持っていってください」
「ん?これ....」
「お弁当です」
朝食と一緒に作ったお弁当
ユノさんは少し驚いたように僕の顔と弁当箱を交互に見ると
すぐにこぼれそうな万遍な笑顔で
「ありがとうチャンミン
こんな事までしてくれて・・・」
「朝食のついでです
お弁当箱は見つからなかったから
タッパーに入れちゃいました」
「本当にありがとう
大切にゆっくり噛んで食べるよ」
弁当箱を握り締め
口角をキュッと上げて嬉しそうに靴を履くユノさん
「あ・・・・・そうだ・・
今日の俺さ......
あまり綺麗な格好じゃないっていうか.....
一応着替え持って行くけど
髪とかグシャグシャかもしれないし」
ユノさんのその日の仕事は建築現場での作業だった
年季の入った作業服は
何度も洗濯をしながら数年間使用してきたのが分かる
「ユノさんはどんな格好でも素敵ですよ」
「汗臭くても?」
「僕もすぐ汗かきますから」
「汗っかきなのかチャンミン?
痩せてるからそんな風には見えないけどな」
「もっのすごい汗っかきです」
「そうなのかぁ?
じゃ、帰りはまたアイスでも買って帰るか?」
「いえ。
僕は結構です」
「なんだよ遠慮すんなよ」
「ぜっんぜん結構です」
・・・・プッ・・・
アッハッハハッハーハー出勤前の玄関口で僕たちは大声で笑った
笑顔が本当に素敵なユノさん
この笑顔がずっと続いてほしいと僕は心の底から願った
「じゃ、時間無いから本当に行ってくる
これ家の鍵。」
「はいお預かりします」
「チャンドラお留守番頼むぞ」
ユノさんはしゃがみ込んでチャンドラにチュッとキスをする
「チャンミンもお留守番頼むぞ」
そう言うとすっくと立ち上がり
僕のおでこに被さっている前髪にチュッとキスをした
「あ・・・//////」
ユノさんは恥ずかしそうに
慌てて玄関の外に出てドアをバタンと閉めたかと思うと
またすぐにドアを開けて呆然と立ったままの僕に
「チャンミン大好き」
そう言って真っ赤な顔をして
再びドアを閉めて出かけていった
呆気にとられながら僕はクスッと笑う
昨日のユノさんとのギャップに心がほっこりした
「さてと....片付けるかな....と
チャンドラしばらく大人しくしててね」
「ワンワン」
チャンドラは素早く玄関口に移動する
人間の言葉が全部分かっているみたいに
本当に聞き訳がいい
ユノさんがあんなに可愛がるのも無理ないか
ユノさんの部屋は殺風景なわりには
積み重ねてある物が多くて
あらゆる物がソファーの周りに集中していた
「ほんとにソファーが好きなんだな....
ここからほとんど動いてないみたい。。。。。」
ソファー周りを整理して
部屋の隅に置いてあった掃除機をかける
「しかしやっぱこの部屋寒いな....」
今朝着ていたユノさんのフリースのパーカー
ちょっとの間借りる事にした
パーカーはユノさんの匂いがまだ残っていて温かかった
胸のあたりに真新しいさっきの朝食の食べこぼしのあとがある
「本当に何から何までユノと同じだなぁアハハ」
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・ユノ
たった一日しか経っていないのに
元の時代でのユノとの生活がとても懐かしく思えた
ユノ心配してるだろうな・・・
僕がいなかったら・・・
仕事はどうなっているんだろう・・・はぁ・・・・・
大きな溜息をついて僕はその場に座り込んだ
そしてベッドの下に隠しておいた昨日の便箋を取り出し
一枚破いてユノに手紙を書いた
勿論届くわけがないのも分かっている......
それでも今溢れる気持ちを何かに託したくて
そうせずにはいられず夢中でペンを走らせた
ユノへ
お元気ですか?
僕は元気だと思いますたぶん
ユノと出会ってから10年以上が経つね
いつの間にか僕たちは大人になったけど
あの頃とユノは少しも変わっていないよ
真っ直ぐで前向きで何があっても諦めないユノ
最初はメンバー
その中のヒョンという思いで
僕はユノの事をずっと尊敬してきました
そして今は男として人間としてあらゆる意味で
僕、シムチャンミンはチョン・ユンホという人を愛しています
家族以上それ以上の信頼で
成り立っている関係が僕たちだと信じています
前にユノは
チャンミンに会わなかったら
自分の人生は半分だけになっていたって言ったよね
それは僕も同じです
ユノに出会っていなければ…
いや、出会っていなかった事なんて
今の僕にはとても考えられない
もしも未来に一人だけ連れて行くことができるなら
チャンミンと一緒に行きたいと
そんな事も言ってくれたよね
あの時僕はとても嬉しかった
どんな未来もユノとなら必ず僕は幸せな道が開けるから。
勿論、自分自身の道も切り開いて行こうと思っているよ
でもね
その延長線上にはいつもユノがいるんだ
もし・・・
もしタイムスリップが出来るとしたら
過去も未来もどんな時代も
やっぱり僕もユノと一緒に行きたい
ユノが僕の意思は問わないで連れて行くと言っていた様に
僕もユノの意思は問わずともついていきたい
ユノ
ユノ
ユノ
僕は今・・・・・・
今・・・・・
とてもとてもユノに会いたいです
・・・・・・・・・・
そう書きかけたところで
涙がポタポタと次から次へと溢れ出た
一緒にって・・・・言ってたのに・・・
僕一人だけで過去に来てしまった
ユノ・・・ごめんなさい・・・
愛のポチポチいつもありがとうございます!
更新の励みになってます感謝感激




今日も最後まで見てくれてありがとうごじゃいます(´;ω;`)
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