低い声でゆっくりと語るユノさんの話を
ひとつも聞き逃さないように
僕は集中して懸命に聞き入った
「さっき
16の頃家出てきたって言ったろ」
「あ、はい」
「日本には家族旅行で何回か来た事があってね
その時ある事務所にスカウトされてさ
オーディションを受けてみろって勧められたんだ」
「芸能事務所のスカウトですか？」
「うん
でもその時は親が一方的に断ってさ
俺は何が何だか分からなくてね
日本語もまともに話せなかったし。
でも韓国戻ってからもやっぱり気になって…
元々、ダンスや歌には興味があったしね」
「それで事務所に？」
「いや、オーディション受けるには
まだまだ自分には足りないものが沢山あったし
しばらくはこっちの音楽学校に通おうと思ってね。
とにかくそれからは歌番組とかコンサートとか色々観覧してみて
ますます俺はジャパニーズPOPの虜になったんだ」
「でも...なぜ日本なんですか？
韓国でオーディションを受けようとは思わなかったですか？」
「 ここには夢があるって思ったから。
韓国の音楽は勿論好きだけどね
俺はここで…
この日本で絶対に成功したいって思ってる
独学で必死に日本語の勉強もしたよ」
「そうですか…」
「なぁ、チャンミン
韓国もいつか日本みたいに
華やかなアイドル時代が訪れるといいよな」
「あ、Ｋ－POPとか....」
「Ｋ－POP？？
なるほどＫ－POPかぁ～
それっていい響きだな！
そんな時代がいつか来るといいんだけどな」
そうか....
この頃はKーPOPってジャンルはまだ存在していなかったんだ
僕が生まれる前の韓国の芸能状況は
どんな風だったのかよく分からないけど
日本の芸能界の方がこの頃は
遥かに華やかだったのかもしれないと思った。
「あの...
ご両親と連絡とってないって言ってましたけど
それってもしかして....」
「チャンミンの想像通りだ
俺が日本でオーディション受けたいって言ったら
もう親でも子でもないって言われてさ
俺、家出同然で出てきたから」
「それからずっと連絡とってないんですか....？」
「.......最後に会ったの7、8年前くらいかな
迷惑かけたくなかったから
成功するまでは絶対に会わないって決めてたのに
…結果的には大変な迷惑かけちゃったけどね
アハハ...
どうしようもない親不孝な息子だよな」
「じゃ...ご両親が今どうしてるかは....」
「妹が一人いてね
両親の様子を時々知らせてくれてるんだ
俺の事も心配してくれてさ
お兄ちゃん身体だけは気をつけなきゃだめだよって」
「妹さんと仲がいいんですね」
「頼れる妹なんだ
兄がこんなんだから余計にしっかりしちゃってねアハハ」
家族の話をしている時のユノさんはとても穏やかな表情で
でも、時々漏らす溜め息のような小さな笑い声が
なんだか僕には切なく思えた
それからもユノさんは自分の話を沢山してくれた
ユノさんは現在も
オーディションのためのレッスンを受けにいっているらしい
仕事はその合間に日雇い労働をして
夜は今晩の様にゲストでDJやショーダンサー
オファーがあればどこへでも行くと
しかし腑に落ちない事がひとつ
「あの...
凄く失礼な事かもしれないんですけど...
聞いてもいいですか？」
「いいよ」
「日本に来たのは10代の頃だったんですよね
10年以上も経ってるのは...」
「聞かれると思ったアハハ.....」
不思議に思った
事務所から正式に一度スカウトまで受けて
オーディションを勧められたのに
どうしてこんなに時が過ぎてしまっているのか
そんなに甘くはなかったという事なのか…
「料理さめちゃうから
とにかく食べようか」
「あ、そうですね
じゃお言葉に甘えていただきます。」
運ばれてきた食事に手をつける
ユノさんのセレクトしたディナーは僕の大好物のものばかりだった
「美味しい！！！
これ凄く美味しいです！
うわ～～～やっべ～」
「ん？
やばいって？何か困るの？」
「あ、いえ、
やばいっていうのはそういう意味じゃなくて
その…美味しすぎるって事で」
「そうなの？
チャンミンはほんとに変わった言葉使うよな
まさに新人類だなアハハ」
ワインもディナーも
美しい夜景のシチュエーションも全てが最高だった
いつの時代も美味しいものは変わらない
肉は裏切らないなぁほんと
幸せ～～♡
「クスッ」
ユノさんが小さく笑う
「何ですか？」
「チャンミンってさ…
家で一緒に食事した時も思ったけど
本当に食べてる時って幸せそうだよな」
「だって…
すっごく美味しいから」
ほっぺを膨らませてモグモグと食べている僕を
頬杖をつきながら優しい瞳で見るユノさん
「チャンミンと食べてると何でも美味しく感じるよ」
「だってここの料理めちゃくちゃ美味しいですよぉ～～
ユノさんは飽きちゃいましたか？？」
「さっきチャンミンが作ってくれた
うどんのカルボナーラの方がよっぽと美味しいけどな俺は」
にこにこしながら僕のグラスにワインを注ぎたす
「あ、すいません
僕ばっかりで何か…
ユノさんも遠慮しないで飲んでください！」
.......といってもユノさんのおごりだった…
僕お金持ってなかったんだっけ
「ユノさん！
カルボナーラなら僕いつでもまた作りますからっ
他にもデパートリーまだまだあるし！」
「プッ...」
ユノさんは軽く噴出しながら
肩を震わせてまたクスクスと笑うと
「俺さ
こんなに自分の事話したのチャンミンが初めてだよ
なんていうかな....
チャンミンの事ずっと前から知ってるみたいな感じで..
今日初めて会ったのに不思議だよな」
ずっと前から……
そうきっともっと前にも......
そしてずっと先でも
僕達は出会ってるんだよ……
ユノさん…
愛のポチポチいつもありがとうございます！
更新の励みになってます感謝感激
「School OZ」の映像が公開されましたね～
オスカーチャンミンしゅてき～(*^_^*)
キャラクターもありましたね。
神秘主義完璧男って(笑)
試写会のピンクチャンミンもかばいかったー！
スニーカーユノとお揃って(*￣∇￣)
そして「WITH」
12月オリコン CDアルバムランキング 1位！
おめでとう！！
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