一体ここはどこ?
あんなに激しく道路に転げ倒れたのに身体がどこも痛くない
怪我ひとつしていないなんて
もしや僕は死んだのか?
ここは天国?
何がなんだか分からずに混乱してベッドの上で頭を抱え込む
すると
部屋のドアが少し開いて何か白いものがフワリと動いた
「ワンワン」
えっ?
「あっ!お前無事だったんだ!」
僕が助けた子犬だった
て、ことはやっぱりここは天国か?
「チャンドラ!うるさいぞ!」
え?
部屋のドアが大きく開いて人影が動く
僕は思わず仰天した
「あ、お前やっと起きたか
どうだ頭痛くないか?」
目の前で僕に話しかける大きな男性
それは紛れもなくユノ
でも.......
なんだろう....雰囲気が....
ユノだけどユノじゃない様な....
え?どうして?
「何だよ
人のことジロジロ見ておかしなやつだな
お前どこの店のやつだ?
俺を連れてったらいくら貰えるんだ?」
「え?何ですかそれ?
僕には何がなんだか...
というか、あの...あなたは」
「何だ違うのか
ただの酔っ払いかお前」
やっぱりユノじゃないのか.....
それにしても日本語....
「あの...すいません
僕ここになんでいるんでしょうか...
全く訳がわからなくて...」
ユノそっくりのその人は鼻で軽く笑うと
コップに熱いお茶をドボドボと注ぎ込み
それを僕の目の前に突き出した
「ほら
これ飲め
二日酔いには効くからな」
「あ....すいません...」
「落ち着いたら帰ってくれよ
俺も暇じゃないんでね」
背中を向けていそいそと着替えをする男性
シャツを脱ぎ捨てたその筋肉質の大きな背中は
やっぱりユノと似すぎていた
「ユノ...」
僕が小さく呟くとびっくりした顔でこちらを振り返る
「お前!
やっぱり俺の事知ってるんじゃないか!
ここに一体何しにきた?」
睨み付ける冷ややかなその瞳は
練習生の頃に初めて会った時のユノを思い出させた
ユノのはずなのにユノじゃない
ユノである事は確かだと思うのに
でも昨日まで一緒だったユノとは明らかに違う
「あの..
名前....ユノっていうんですか?
....ユンホ?」
「知ってるんだろ?しらじらしいな
俺はユノだ
だからどうしたいんだ?あん?」
見た目もそっくりで名前も...ユノ...
一体これは...
「いえ、僕の知ってる人に凄く似ていてその..
名前も同じなんて..びっくりしちゃって...」
「そうなのか?
俺が?お前の知り合いに似てるってそれだけか?」
そう言って脱ぎ捨てたシャツを足で蹴飛ばし
ファンシーケースの中から無造作に丸めた新しいシャツを手に取る
しわだらけの白いシャツを片手で頭から被り
ドスンとソファーに腰掛けて
長い前髪の間からこちらを睨みつけながら
煙草に火をつけ燻らせる
「あの...僕は...」
「お前昨日俺んちの前でぶっ倒れてたんだよ
すげぇ酔っ払ってたみたいだけど覚えてないの?」
……酔っぱらって倒れてたって
まるで覚えてない....
転んだ時に頭でも打って酔いが急激にまわったとか....?
「あ....そうだったんですか...
あの、その犬は..その..あなたの?」
「あ?
チャンドラか?こいつは俺の家族だ」
「チャンドラ?
名前チャンドラっていうんですか?」
「そうだけど
それがどうかしたか?」
「僕...チャンミンといいます」
すると驚いた様に
一瞬目を丸くしたかと思うと
冷ややかだった鋭い眼は少し下がり気味になり
いきなり噴出しては大声で笑い出す
「ブッ...!
アーハーハーハハハ!!!
お前犬みたいな名前だな!チャンミン?
本名か?」
そんなに笑わなくても....
僕は少しムカッとしてほっぺをプーッと膨らませて真っ赤になった
「あーあーごめんごめん
気分悪くしたか?」
「いえ、別にいいです
僕が犬みたいな名前じゃなくて犬が僕みたいな名前だけですから」
「あだ名とかチャンドラとか言われるのか?やっぱり?」
「言われませんっ」
「そういえばチャンドラとお前何となく似てるな
クリクリな黒目がちなとことか....
毛がフワフワしてるとこも何となくおそろいじゃね?」
「僕は犬に似てるとか言われた事ないです」
「そっか?似てるぞ
こいつも3年前に家の前で倒れてたんだ」
「え...
倒れてた?」
「そう
前の飼い主に虐待されて捨てられたのかもしれないな
身体のあちこち怪我しててさ
痩せ細って今とは想像つかないくらいに臆病でな」
「え....」
「ドックフードが食べられなくてしばらくは手作りで与えてたんだ
そのうちにだんだんと回復してきて
今はこんなに元気いっぱいでこのとおり」
チャンドラは鼻をクンクンさせて尻尾を振りながら
ユノさんの膝の上に乗りお腹を見せて甘えだした
「なっチャンドラ
俺とお前の出会いは運命だったんだよな」
愛しげな瞳でチャンドラのお腹を優しく撫でながら微笑む
少し上がった口角は僕を見るいつものユノみたいだった
「あ、そうだ」
「はい?」
「お前アレだ!
犬じゃなくてトナカイに似てるよ!」
「鹿とかは....
たまに言われますけど...」
「だろ?やっぱなぁ~
俺なかなかいい線ついてるだろ?」
「もうそんな事どうでもいいです」
初対面だとしたら結構失礼な人だな...この人...
でも何となく憎めないというか...
ちょっと天然な感じも似てるし.....
「お前なかなか面白いな
俺はさっきも言ったけど名前はユノ
お前の知り合いとはどうやら似ても似つかない男だと思うけどね」
「ユノ....さん」
「おう
チャンミンお前いくつだ?」
「26歳です」
「お~
そっか俺と変わらないな
俺は来年の2月で29になる」
「誕生日2月なんですか?
いつ?」
「6日だけど。
なんでそんなに詳しく聞くの?
お前もしや男に興味ある人?」
「そんな!
僕にはちゃんと大事な人がいますから!」
男だけど....
というか2月6日....やっぱりユノと同じだ...
「1986年2月6日生まれなんですか?
本当に?」
「は?
何言ってんのお前?」
「何って...来年29になるんですよね?」
お前さ
やっぱり昨日酔っ払って頭でも打ったんじゃないのか?
今は1985年だろ
俺は1957年生まれだ
お前は59年か58年だろ?」
え?
その時ユノさんの部屋の電話が鳴る
リリリリリリーーン
リリリリーン
あ・・・
あれってオブジェじゃなかったんだ....
「はい
あ、今ちょっと取り込み中
今日少し遅れるから
また後でかけ直す」
何がなんだか分からずに呆然としている僕の頭を
ユノさんは後ろからコツンと手で突付く
「おいチャンミン
お前腹減っただろ?
なんか食べなきゃ頭働かないぞ
俺もちょうど今から食事だからついでに食ってくか?」
「え...
ユノさんが作るんですか?」
「そうだけど。
俺しかいないからなここ」
料理ができるなんて...
やっぱり僕の知ってるユノじゃないや.....
「あの..
なんで僕にそんなに良くしてくれるんですか?
それに...理由はわからないけど
さっき言ってた...その...
自分を捕まえにきたかもしれないって
それなのに何故助けてくれたんですか?」
「別に良くしてる訳じゃないよ
ただ倒れてるやつを放っておけなかっただけだ
それに」
「それに?」
「それにお前悪いやつじゃなさそうだしな
なんか...
どっかで会った事あるかな?
不思議と懐かしいんだよな...お前見てると」
「....僕も....です」
「まぁこれも何かの縁だろ
今日はゆっくりしていけよ
何かつくってやるからテレビでも見て待ってろ」
そう言ってドアをバタンと閉めて台所に向かうユノさん
さっき初めて会った時の冷ややかな険しい表情とは違い
僕に向けるその瞳はとても穏やかで
ユノさんと僕の心の距離は少しだけ近くなった気がした
愛のポチポチいつもありがとうございます!
更新の励みになってます感謝感激




今日はデビュー11周年ですね(*^_^*)
ユノ チャンミンおめでとう!
11周年…言葉に出すのは簡単だけど
決して簡単ではなかったユノとチャンミンの11年間の歩み
ファンにしても重みのある記念日ですね。
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