「...あ、また鈴の音が..」
「ほんとだ、、俺も今聴こえた」
さっき石段を見つけた時に小さく鳴った鈴の音
今度ははっきりとした音でで何度となく鳴り響く
ユノも僕もその音をしっかりと確認をする
音の方向に歩いていくと
そこにあるのは石段のあった辺りの古い大きな樹木
近づいていくと鈴の音はそこでプツリと途切れた
「ヒョン....ここ.....
さっきの石段のあったとこじゃないですか?」
「うん、ここだった様な気がするけど
でも…石段は?」
確かにそこは
さっきまで自分達が座っていた石段があった場所
しかし不思議な事にその姿はどこにも見当たらない
「消えるわけないよな…
ここじゃなかったか?」
「いえ、ここですよ
だってこの木の前にあったんですから」
「でも似たような木は一杯あるしなぁ...」
「いえ、絶対にここです」
ユノの言う様に同じような樹木はそこら中に生えていたが
特に年輪が刻まれ
数百年前からあるであろうと思える古びた一本の木は
ここに来た時から僕の目にすぐ止まって
何故かずっと気になっていた事をユノに話す
「なるほど…
この木かぁ…確かにどれよりも古いな
これだけ根を張ってるのも初めて見たかも…
百年ぐらい前からあるのかもしれないよな」
「もっとじゃないですかね....
1200~2000年っていう歴史のある樹木もあるし
世界で最も古い樹木は
樹齢5000年近いとも言われてるみたいですから」
「そうなの?
じゃこの木も...
数百年も前からここに住んでるかもしれないよなぁ…
ここでおきたことも全て見てきたんだろうな」
ふと見ると
さっきの大きな葉っぱが
木の側に落ちているのに僕達は気づく
「これって……さっきの…」
葉っぱを拾いあげると
樹木の下の砂が少し盛り上がっている様な
不自然な場所を見つけた
「ここ、なんか盛り上がってますよね?」
「なんだろう…」
恐る恐る砂を少し掘ってみると
中からは一本の長い縄が出てきた
軽く引っ張ってみると
そこには鈴らしきものが付いている
「これ....」
「これかな?鈴の音?
でも、砂に埋まってたのになんで…」
そして僕とユノはある事に気づく
「あの.....ヒョン...
これってもしかしたら....
さっきのおばあさんが腰に付けていたのと同じのじゃ...」
「あ、、」
咄嗟に僕達は辺りをキョロキョロと見回し
おばあさんの姿を探す
しかしやはりどこにも見つからない
「なんで砂に埋まってたんだろうこれ....」
「でも....
こういうのが何本もあるという事かもしれないし...」
「うん....そうかもしれないか...」
ユノは砂から縄を引き上げる
僕達はしばらくその縄をボーッと見詰めていた
するとどこからか少し強い風が吹いてきて
湖が小刻みに波打ちをはじめる
木々が大きくユラユラと揺れて
その瞬間に鈴がチャリンと鳴り響いた
「ヒョン…
もしかしてこの縄…
この木に巻いてあったものなんじゃないですか?」
「うん
俺もそう思った
おばあさん言ってたよな
ここには命があって石像や木は神像
神木と呼ばれ神像、祭壇、神木も
全てが人間と同じ扱いとされるって」
「はい
確かにそう言ってました」
僕とユノは顔を見合わせ互いに頷き
縄をぐるっとその木に丁寧に巻いていった
そしてまた下に落ちて埋まってしまわぬ様に
しっかり強く結び目を固定して
砂で汚れた鈴をタオルで拭き取り
木の周りを綺麗に片付けた
「よし
これでいい」
「ヒョン....
何となく...何となくなんだけど
さっきのおばあさん....
この木の神なんじゃないかなって....」
「木の?神?」
「うん
もしかしたら何百年も前からここに居て
この場所をずっと見てきて
何人ものすれ違う人達や祈りを捧げる人達を
見送っていたんじゃないかなって....」
勿論、そんな非日常な現象がある訳が無い
でも確かに僕はここに来て
あのおばあさんに出逢った事で
自分の何かが変わった気がしたから
やっぱりあのおばあさんは
普通の人間じゃなかったんじゃないかなって思った
生きているうちにしか思いは伝わらない
命ある限り輝けと僕達に伝えて消えたおばあさん
それはきっと僕達が生まれるずっと前から
何もかも悟っていたのではないだろうか
僕達が世に送り出された理由
ユノと僕が出逢った理由
今2人が一緒にいる理由
あるいは僕達の未来も
全て知っているのではないだろうか
「なんか....
ほんと不思議だよな
よく分からないけど俺....
来るべきしてここに来たような気がする.」
「僕もです
僕とヒョンが来る事をこの神木はきっと
ずっと前から知っていたんじゃないかって」
「うん....そうだと思う
俺たちが来る事を
何百年も前から待っていたのかもしれないな」
僕とユノは真っ直ぐに木の前に立ち
90度のお辞儀をする
「ありがとうございました」
「さようなら
また必ずいつかここに訪れます」
風が柔らかく吹いて鈴の音が遠くでチャリンと響く
僕はふいに振り返る
「どうしたチャンミナ?」
「.....うん...
なんか...
人の声が聞こえたような気がして..」
「ほんと?」
「あ、いえ、
気のせいですきっと
行きましょう」
手を繋ぎ並んで歩いていく僕とユノの後姿を
神木はずっといつまでも
見守ってくれている様な気がした
オレンジ色に染まった夕陽の中
僕達は名残惜しくこの場を去った
自転車のある場所に行き地図の方向に向かう
そこからは30分とかからない場所で
やはり思っていた通りの賑わった観光地の様だ
ピザを3枚ユノにおごってもらって
僕はお腹が一杯でとてもご機嫌
「しかしチャンミナほんとによく食うな~」
「いつもはピザなら5枚くらい楽勝ですよ
でも思った以上に大きかったから3枚が限界だったんです」
「というかさ....
なんで限界まで食べるかなぁ
チャンミナの胃は宇宙みたいだなアハハ」
「ヒョンはあれだけで足りるの?
1枚だけしか食べなかったし...」
「あのね
ピザ1枚って普通だからねぇ」
「そうですか?
僕おかしいですか?」
「いや、チャンミナはそれでいいんじゃない?
あんなに食べてもぜっんぜん太らないしなぁ」
「いえ、見えないとこがたまに太ります...」
「どこ?見えないとこって?」
「それは秘密です」
「じゃ今度一緒に温泉でも行こうか?」
「え/////」
「いや?」
「いえ、、行きたいです...///」
たわいの無い会話をしながら歩いていると
僕たちの前に小さな少年が両手を差し出して何かくれとねだる
相変わらずの光景
僕はその少年に
にっこり微笑んでポケットからハンカチを出して
丸めてからポイっとキャンディーをその小さな手に放る
少年はきらきらとした笑顔で
「トゥリマカシ」と言って
大事そうにキャンディーを握り締めて走って行った
「チャンミナやるじゃん」
「はい
こんな事もあるかなって
ヒョンの魔法のキャンディー
お裾分けしてもらいました」
「魔法かぁ…」
「ヒョンがここに来た日に僕に言ったんですよ」
「俺、そんなこと言ったかなぁアハハ」
「はい
人を笑顔にする魔法です」
僕の頭をクシャクシャと撫でて目を細めるユノ
「ほんとチャンミナは最高だな」
僕たちはホテルに自転車を帰してから
タクシーで空港に向かった
車内の窓から見るすっかり暗くなった街並みは
ここに来たばかりの時と同じなのに何となく違う風景に見えた
それは到着した時と今とでは
僕の気持ちの変化が沢山あったからなのかもしれないけど
何よりもユノと一緒だからなのだと思う
「なぁチャンミナ」
「はい?」
「俺さ
実はお前に嘘ついてた事があるんだけど...」
「え?嘘?それってなんですか?」
「ホテルの部屋」
「え?」
「ツインが満室だったからダブルにしたってやつ」
「へ?」
「本当はどっちも空いてたんだけどね
チャンミナとひとつのベッドで寝たかったから嘘ついた」
「ヒョン/////」
「エヘヘ」
舌をペロッと出して子供みたいに笑うユノ
そんな嘘なら
これから何度ついても構わない
旅にアバンチュールはつきものだ
この旅を通して僕は僕自身をよく知る事が出来た
ユノに必要とされ
こんなに愛されている自分がもっと好きになった
生きているという事は何事にも向き合う事で
愛しい人と見る夢は
どこまでも果てしなくシアワセだ
空港に到着するとユノが言う
「チャンミナほんとに楽しい旅だった
ありがとう
これからもよろしくな」
そして僕もユノに言う
ずっと言いたかった一言
「これからも僕は
いつでもユノの傍にいます」
ユノは微笑んで深く何度も頷く
今回の旅はもうすぐ終わりになろうとしているけど
僕たちの旅はまだまだ終わらない
僕とユノは
東方神起という旅は
まだ始まったばかりだ
完
愛のポチポチいつもありがとうございます!
更新の励みになってます感謝感激




最後まで読んでくれてありがとうごじゃいます<(_ _)>
慣れない妄想小説でしたが予定外の長さになってしまい
まさかの50話超えになりましたが
最後まで皆さんお付き合いありがとうございました(*^_^*)
- 関連記事
-
スポンサーサイト