ハナヨメの僕に
頬を伝う汗を
唇で拭き取られたヴァンパイア
少し照れくさそうに目を細めると
満足そうに微笑んだ
ぬるくなったトマトジュースを口にして
「ますます血の味みたいになってきた」
中指をグラスに入れて掻き回すと
その赤く染まった指を僕の口元に持っていき
ドキッとする様な鋭い目つきで
「どうだ
お前もひとくち」
「え....」
どうしよう....
ヴァンパイアに成りきってるユノ
ここはひとくち、いっておいた方がいいのか..
迷っていると
「なんてなっ
アハッ」
おどけた様にユノは
その指を自分でペロッと舐める
もう....
どこまでが本気でどこまでが冗談なんだか.....
「ところでヒールきつくない?
立ちっぱなしで疲れないか?」
「うん
ヒールって結構疲れますね
女の人はよくこういうのずっと履いてられるなぁ」
「あんまりきつかったら言えよ」
僕の手を自分の肩に添わせて
寄り掛からせようとする
そんな何気ない気遣いがちょっと嬉しくて
言葉に甘えて僕はユノにもたれ掛かった
その時
反対側のユノの肩をトントンと叩く人がいる
振り向くとさっきのマイケルだった
「サッキワタノシカッタヨ」
「あ、こちらこそ楽しかったです!」
成りきりマイケルは日本語が少し話せるらしい
どうやら僕達を日本人と勘違いしている様だった
「アナタノダンスワナカナカスバラシイ
レッスンシタラモットモットヨクナル」
「ありがとうございます光栄です
あなたのダンスも素晴らしいと思います!」
「ソレワドウモ
ドウダロウ、ワタシトイッショニ
シゴトヲシテミナイカイ?」
「え?」
話を聞いてみると
この成りきりマイケルは
現地では名の知れた有名なダンサーで
地元のB-boyの間では神様的存在だと
スクールもいくつか開業していて
マスコミにも取り上げられた事があるらしい
つまりユノはダンサーとしてスカウトされた様だった
「ドウダ?
ワルイハナシジャナイダロウ?
ナンナラ、スクールモヒトツマカセテモイイゾ」
「いや...あの.....
お話は嬉しいんですが
僕は他にも仕事持ってるしそれに.....」
そう言ってユノは困った様に僕の顔を見る
必死てスカウトするマイケルさんには悪いけど
僕は内心笑いそうになった
まさか自分がダンサーとしてスカウトしているこの男が
世界で活躍しているアーティストだと後から知る事があったら
どんなリアクションになるんだろうかと
想像したらニヤけが止まらなかった
「ドウシテモムリカ?
オシイ!ジツニオシイ!
アナタミタイナ、ルックスノイイダンサー
モシカシタラ、タレントニナルチャンスダッテアルカモシレナイノニ」
「いや....
でもぼくは......」
マイケルは僕の方を見て
あ~なるほどという顔をしながら
「ソウカ........
コンナステキナコンヤクシャガイルンダナ
ヤハリニホンニカエラナイワケニワイカナイカ...」
「はい」
「ナンナラ、カノジョモイッショニコッチニクラスッテノワドウダ?」
僕達は顔を見合わせて小さく笑った
「いえ、
僕達には他にも待っててくれている人がいますから」
にっこり微笑んでユノはそう答えた
「ソウカ...ザンネンダガシカタナイナ
シカシ、ホントニキレイナカノジョダ
ウラヤマシイヨ
スエナガクオシアワセニ」
そう言いながらユノと握手をして
「オシイ!ジツニオシイ!」
マイケルは叫びながら残念そうに背中を向けた
僕は少しニヤけながら
「いいんですか?
せっかくのチャンスを」
「そうだな
俺もしかしたら
この国のタレントになれるかもしれなかったのにな」
「そうですよぅ
ダンススクールも持てたかもしれないのに」
「おしい事したかな?俺?」
僕はマイケルのマネをして
オーバーリアクションで
「オイシ!ジツニオシイ!」
ユノは腹を抱えて大爆笑する
「じゃさ、
俺がもしここで暮らすって言ったら
チャンミナもここにいてくれる?」
「いません」
「ほんとに?」
「 はい、いません」
「つめたいな~チャンミナァ~
一緒にいてくれないのかよぉ」
「一緒に連れて帰ります」
そう言って僕はまた
ユノの広い肩にもたれ掛かかった
つづく
(この物語はフィクションです)
愛のポチポチ更新の励みとなっています
心から感謝しておりますありがとうございます




今日も読んでくれてありがとんごじゃいますm(__)m
ファンイベ当落ありましたね~
当選された方おめでとうございます!
二次募集もおそらくあると思うので
全滅だった方も落ち込まないで頑張っていきましょう!
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