「りゅっく.......」
「ん?」
「僕のリュックかえして」
「ああ、これ?
チャンミナ疲れてるだろ
俺持っててやるから手ぶらで歩きな」
「いいからかえして」
そう言いながら僕はユノの手から自分のリュックを取り上げる
ユノはちょっと困った顔をしてサングラスをかけてゆっくり歩き出した
帰りの道のりはとても長く感じた
さっき二人で手を繋いで歩いてきた道が
今は全く違う風景に思えた
ユノは時々話しかけてきては
疲れているであろう僕に気を使っている様子だった
僕はたびたび頷いたりはしていたが
ほとんど話は耳に入ってこなくて
無言のまま早歩きをしながらもさっきの電話の女性の事ばかり考えていた
ようやくホテルに到着したかと思うと
ユノは立ち止まり
「チャンミナ
先に部屋に行ってて」
そう言うとポケットから携帯を取りだし
フロントの横の壁際の隅で今度は自分からどこかに電話をかけている様子だった
僕は居たたまれなくなり
ひとり部屋に先に戻ると
ドアを開けるなりすぐに冷蔵庫に入っていた缶ビールを数本取りだし
一例にテーブルの上に並べて全ての蓋を順番に開けていき端から一気に飲み干した
6本の350mlの缶ビールは
10分もしないうちに空になった
「ふぅ.......
全然酔えない.......」
気を失うくらいに酔っぱらって全てを忘れて眠りについてしまいたいと思った
半分やけくそな気持ちになりながら
部屋に完備してあった
普段は飲まないバーボンを開けて
ストレートで飲み始める
「ゴホッゴホッ」
喉に火が付いたように熱い.....
ユノはまだ帰ってこない
フラフラとトイレに立ち
ふと隣のバスルームを見て到着した時の事を思い出す
バスルームの扉を開けると
一面に敷き詰められていた蝋燭も
ハートで型どられた花びらもそこには跡形もなく
「ようこそチャンミナ」と書かれたメモだけが
そのまま残されていた
「ルームクリーニング......
あれからきたのか........ 」
黒のサインペンで書かれたメモは
ところどころ文字がブルーに滲んでいて
濡れた水滴を指で拭き取りながら僕はそれを大切にポケットに閉まった
....こういうサプライズ
他の人にもしてるのかな....
頭を左右に振りながら両手で髪をグシャグシャとする
だいたい僕がこんなこと思うのも...
おかしいよな.....
恋人じゃあるまいし
恋人......
あの人.....
恋人なのかなやっぱり.......
電話かけ直すって言ってたもんな......
でも......
今じゃなくったって
今じゃなくてもいいじゃないか......
僕はそのままバスルームの前で座り込み背中を丸めて蹲った
しばらくして
フラフラとフロアに戻り
またバーボンを飲み始める
バタンッ
ようやくユノが部屋に帰ってきた
「はぁはぁっ
遅くなっちゃったな
ごめんなチャンミナ」
息を切らしてそのままソファーに倒れ込む
フロントからこの部屋までは結構距離があった
電話を切った後
きっと全力でここまで走ってきたのだろう
「あれ?
チャンミナ飲んでるの?
じゃ俺も飲むかな
俺にもちょうだい」
そう言って冷蔵庫の上に置いてあったグラスを僕に差し出す
「このお酒強いですよ....飲めるんですか?」
「大丈夫大丈夫」
僕はユノのグラスに3分の1ぐらいの酒を注いだ
走ってきて喉が渇いていたのかユノはアルコール度数40度以上もあるバーボンを味見もしないで勢いよく飲む
「ゴホゴホゴホゴホッッ
う"ェェーー!」
そりゃ噎せるよ....
僕でさえキツいんだから
「チャンミナァ~、ゴホッゴホッ
こんなの飲んでるの??」
「今日は飲みたい気分なんです
でもヒョンはもうやめた方がいいですよ」
「チャンミナも
控え目にした方がいいんじゃないか?
飲みすぎると身体によくないぞ」
バーボン一気飲みした人が何言ってるんだ......
「僕はまだ飲みますからヒョンはどうぞ先に寝てください」
「まっ、そうだな
まだ早いしせっかくだからとことん飲むか」
そう言ってユノは自分のグラスにバーボンを注ぎたす
「ゴホッゴホッ」
そしてまた飲んでは噎せる
だから........
ユノにはストレートはきついってば.....
僕はフロントに電話をしてルームサービスを頼んだ
「すいません
氷をお願いします
あと軽い食事も何かあればお願いします」
「食事も頼んだのか?」
「何も食べないで飲むのは身体に良くないですよ。飲むならしっかり食べながら飲んでください」
「はーい」
ユノは少しおどけた様に大きな声で返事をする
僕は少し酔っていたせいか
ユノに絡みたくなった
「大事な用事はもう済んだんですか?」
「あ、うん
なんとかおさまった」
おさまったって.....
うまく恋人を宥めたのか?
帰国したらすぐに会いに行くよとでも言ったのか......
「ヒョンも結構やりますね」
「ん?酒か?
まぁたまには飲むよ俺も
一人でも寝酒で飲むときあるしね」
「酒のことじゃねーです」
「ん?なに?」
「こんなとこに来てる場合じゃなかったんじゃねーですか?
ヒョンは色々とプライベートが忙がしいれしょうから」
ろれつの回らない口調で僕はユノに絡んだ
「まあな
でも俺は来て良かったと思ってるよ」
嘘だ.......
早く帰らなきゃやばいって思ってるくせに...
恋人に内緒にしてきたくせに......
「チャンミナさっきの店でさ
愛について語ろうとしてたろ」
「は?」
「愛の意味がどうのってやつ
あの時なんかかっこ良かったよ」
「愛なんて....
僕はそんなの語れないよ....
恋愛経験も浅いし.......」
本当の事だった
「恋愛だけが愛じゃないよな」
ユノが僕の目を見て言う
「家族とか友達とか?
そういうことですか?」
「いや、そういうんじゃなくて
恋愛を超えた愛っていうのもこの世には存在するって思わない?」
「親子とかじゃなくて男女の愛のこと?
恋愛以外に何があるんですか?
夫婦愛とかですか?」
「うーん
つまりそういうの全て含めたそれ以上の関係」
「まったくわかりません」
真面目トークが始まってきた
ユノは少し酔ってきた様だ
「チャンミナお前の夢は何だ?」
「ぼく...ですか?
ぼくは.......」
「うん」
「とりあえず今はお腹減りました
美味しいものが食べたいです」
「あはーはーは
チャンミナの夢はすぐ叶う夢だな」
「らって.....腹ペコらから....」
ろれつが回らず
まともに喋れていない僕の口元を摘まんで
ユノが笑う
「何が食べたい?」
「おっきなピザ!」
ジェスチャーで両手を大きく広げて丸い形をつくりそう言うと
ユノは大爆笑してその場で転げ回った
まもなくしてルームサービスが運ばれてきた
酒のつまみになる様に軽食を頼んだつもりだったが運ばれてきたのはオムライスの様な卵で包んだケチャップ味のご飯だった
お腹が空いていた僕はあっという間に自分の分をたいらげてしまった
ぜんぜん物足りない.......
トントン
ドアをノックする音
「またルームサービスですかね?」
「あ、きたきた」
ユノがドアを開けて外に出る
しばらくすると大きな箱を持ってニヤニヤ笑いながら戻ってきた
「お待たせしました
ピザでございまーす」
そう言って蓋を開けてテーブルに大きなピザをドサッと置いた
「これっ
どうしたの??」
「ピザの配達してくれるところがあるって昼間フロントで聞いてたから注文しておいたんだ」
「そうなんですかー
じゃ、ルームサービスの軽食はいりませんでしたよね」
「あれじゃ物足りないだろ?」
「はい」
「チャンミナの夢だからなっ
さぁ、召し上がれ!」
「はいっ
いただきまーす!」
僕はすぐに大きなアツアツのピザを口の中一杯にほうばると
そのあまりの美味しさに感激して思わず声が出た
「ん~~~~♪」
眉毛を下げて目を瞑り
顔を左右にブルブルさせる
この上ないような幸せそうな僕の顔を見て
ニヤニヤしながらユノはずっと嬉しそうに見ている
「ほんと幸せそうだな」
「とっても幸せですっ」
そう言ってまた大きな口を開けてピザを食べ続ける
「俺も幸せ」
「ヒョン全然食べてないんじゃないですかぁ
食べないんですか?旨いよこれ」
「俺、チャンミナが食べてるの見てるのが幸せ」
「見てても美味しくないでしょ?」
「これが俺の夢だから」
「はい?」
ヒョンがその時何を言いたいのか全く分からなかったけど
目の前の美味しいピザにとにかく僕は夢中になった
そして空になったピザの箱を眺めていて
少したってから僕はハッ気づく
「ヒョン
このピザっていつ注文しておいたんですか?」
「ん?さっきだけど」
「さっきってホテル帰ってきた時?」
「うん、なかなか電話が繋がらなくてさ
4件目でやっと通じたんだ
この辺、夜になると営業してる店少ないみたいだな」
さっき.....
ホテルに戻ってきた時に電話していたのってピザ屋だったんだ.......
だから...時間がかかったんだね....
またしてもユノのサプライズに僕は感動を覚えた
でも.....
やっぱりそれでも胸の中には電話の女性の事が引っ掛かっていて
飲めば飲むほど
どうにもその思いは深まっていった
つづく
(この物語はフィクションです)
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ミミイベ当選なされた方おめでとうございます(*^_^*)
やはり激戦ですよね~
ファンミたくさんの方々が参加できます様に
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