「チャンミンの悩み」(byゆっち)
…そう、そうなんだ。
最近、ぼくの「あの辺」が変だ。
これはまだ誰にも言っていないし、言えない。
ユノヒョンにさえ言っていないこと…
アフリカ行きを笑顔で見送りたかったから。。。
実は、ぼくのBIGBOY周辺に妙な違和感を感じる。
何かがまとわりついているようなくすぐったいような感覚…。
…でも、そこを見るのが怖い…。
だから、ボディソープで泡泡たくさんつけてシャワーしてみたんだ。
もちろん、下着も替えた。。。
でも、その感覚はずっと続いているんだ。
いったい何???怖い。
もはやゴキブリやお化けよりも怖いかもしれない。
ハッ!ま、まさか貞子の呪い?…。
うそだろ、まさかうそだろっ。どうしよう…
…ヒョ、ヒョン、早く帰ってきてよぅ~~~っ!
ヒョーーーーン!!!
「チャンミンの悩み②」~ヒョンの帰国~ユノヒョンが帰国した…らしい。
その日。僕は今度のドラマの打ち合わせ初日だった。
マネと僕。シナリオ担当者とスタッフさんと4人。
午後から事務所の一室で会っていた。
今日のスケジュールはそれだけだったから
その後はひとりで久しぶりにジムで汗を流すつもりでいた。
スポーツで汗を流すのってこんなに気持ちいいことだって
ゲイ体能を通してあらためて知った気がするんだ。
筋肉痛はハンパないけどね。。。
ステージで流す汗とはまたちがう爽快感も感じていた。
それに先輩や友達も増えたし…精神的にもすごく鍛えられた気がする
充実していてハンパない練習も収録も楽しい。
ただ…ヒョンがいない空虚感と僕の「あの辺の違和感」を覗けば…。
…以前よりもあの違和感が増していて相変わらず悩まされていた。
いや、最近は脇の辺りも同じ感覚があるんだ。
もちろん、何が原因なのかまだ確認していない。
もしかしたら、何か変な病気なのかとさえ思った。
でも、病院なんて行きたくなかった。
そもそもどこを受診すればいいんだ?
外科?皮膚科?…まさか精神科なのか?答えは出ない。
まして、下手に受診して誰かに目撃されて変な噂になるのもごめんだ
ヒョンが帰ってきたらすぐにでも会って相談したかった。
まさかガーナのホテルに電話するなんてできるはずもなかった。
どうしようもなかった。
だから結局、ヒョンが元気に帰って落ち着いたら…
全部打ち明けようという結論に達していた。
こんなこと…そんな場所だけに。。。
やっぱりヒョンにしか言えないことだった。
だって、ヒョンと僕は…。。。
「チャンミンの悩み③」~ヒョンの帰国②~仮タイトルのシナリオを渡され、目を通していた。
ん?こんなセリフ…?マジかぁ。この僕が?…
眉間にシワがよったのが自分でもわかったくらいだった。
ブブッブブッ。。。
右隣のイスに置いていた皮のトートバッグ。
内ポケットに入れているスマホが鳴った。
シナリオに集中していたからちょっとドキっとした。
マナーモードの鈍い振動音が少し響いた。
きっとヒョンだ…。直感だった。
チラっとバッグに視線だけ振って戻した。
すぐに出るのは失礼だと思ったし、まだシナリオは半分くらいだったし…
気づかないふりをして目を通し続けていた。
僕が演じる主人公が苦悩するシーンだ。
こんな演技できるかな?
そんなことを考えながらページをめくりかけた時…
「チャンミンさん。少し、休憩入れましょうか。」
シナリオ担当のパクさんだった。
え?と顔を上げた僕を見て言った。
「すみません。別件で連絡があったので、勝手なんですが
少しだけ席を外させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ…はい。僕なら大丈夫ですから、どうぞ。」
「いきなりですみません。では、30分くらいみていただいて…
チャンミンさんも少しリラックスなさってください。」
「はい、ありがとうございます。どうぞ、お構いなく。」
(この日本語もいつか使ってみたかったから↑ちょっとニヤけた)
パクさんは同行していたスタッフと一緒に一礼して出て行った。
すごいタイミングだった。
さっき、僕のスマホが鳴った時、パクさんのスマホも受信したらしいのだ。
他のプロジェクトチームからのメールだったそうだ。
きっと、マナーモードだったはずだけど、僕はそれには気づかなかった。
でも、そんな偶然って…マジすげー。。。
テーブルに置いていたミネラルウォーターを一口流し込む。
ん?…そういえば…さっき…
部屋を出る時にパクさんが僕のバッグに視線を落としたように見えた…
??…気のせい?…
まぁ、いっか。気づかれてたとしても問題ないことだ。
スマホが鳴っただけじゃないか。。。
そんなことを考えながら、ちょっとだけ気が抜けた感じになった。
僕はシナリオにボールペンを挟んで閉じた。
ガタッ。
部屋の窓側に座っていたマネ君が立ち上がっていた。
「何?どうしたの?」
(彼は僕より年下だから言葉もこんな感じだ)
「昨日、実は飲みすぎて…頭痛が。薬買って来てもいいですか?」
(彼は敬語だ)
「はぁ?…なんだよそれ。はいはい、どうぞどうぞ」
ぺこぺことお辞儀をしながら照れくさそうにマネ君が出て行った。
…ったく、二日酔いかよ。ちゃんとコントロールしろよな。
マネ君が出て行ったのを見届けてすぐ、内ポケットに手を入れた。
あ…やっぱり…。
ヒョンからのラインだった。
「チャンミン、着いた!今、まだ空港だけど、とりあえず家に帰るよ。
これから会えるか?会いたい。いつ会うの?今でしょ!」
<林先生のキャラスタンプ>
…フフッ。ヒョン、まだ使ってる…。
「チャンミン、今、どこだよぅ?」
<泣いているクマのスタンプ>
はいはい。
「ヒョン、お帰り。疲れてるでしょ?今日はとりあえずゆっくり休んでよ」
(あえて、絵文字もスタンプも使わない僕)
すぐ既読になった(笑)
「遅いよ!チャンミン!もう家に着いちゃったよぅ」
<怒っているうさぎのスタンプ>
「今、ドラマの打ち合わせ中ですから。
今日はそれだけだから終われば時間ありますよ。」
(冷静さを装った…今すぐ会いたいのに…)
<ワーイ!と喜んでいるパンダのスタンプ>
「じゃぁ、待ってるから!!」
「はいはい、終わったら連絡します。それで、い、い、で、す、か?」
(わざとじらしてみた。…僕ってパボだ)
でも…ヒョンは相変わらずで…。
どこでゲットしたのか…
OK!とウィンクした壇蜜とゆるキャラのOK!スタンプが縦に並んでいた。
ハァ?どんだけスタンプ持ってんだよっ。
ククッ。ヒョン…。
しばらく会話を上下にスクロールしながら、フゥ~ッと息をつく。
ヒョン…無事に帰ったんだね。安心した。ずっと心配だった。
最近、こんなに離れたことなかったから、寂しかったし辛かった。
長いフライト、行き慣れない国と環境で体調大丈夫だった?。。。
疲れてるはずなのに、僕に会いたいって…なんだよ、ヒョン。
いつもストレートにぶつけてくる。苦しいよ。でもうれしいんだ。
ヒョン、会ったらなんて言おう…か。。。
ううん。きっと何も言わずに…笑顔でハグだよね。
それだけで通じる。思わず頬が緩んだ。
だけど、ヒョンには…
「これから、ラインしても見れませんから、無駄ですよ。」
とだけ伝えた。。。僕って、ひどい?
今度はスマホをパーカーのポケットに入れた。
マナーモードの振動がすぐにわかるように。
もうすぐ、会えるから…ヒョン。。。
そして、相変わらずの「あの辺の違和感」のことを
ヒョンにどう切り出すかを考えずにはいられなかった。。。
「チャンミンの悩み③」~お帰り、ヒョン~コンコン。
ノックだ。きっとパクさん達だ。
スマホで時間を見た。ほんとに30分経っていたようだ。
(時間にきっちりしている。この人達は信用できそうだ。)
「はい、どうぞ。」
「チャンミンさん、大変お待たせしました。」
「いえ、そちらは大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。おかげさまで順調に進みました。」
「そうですか、それはよかったです。」
「ありがとうございます。それではまた始めましょうか。
今までに何かご不明な点とかございましたか?」
「…そうですねぇ…えっとですね…ここなんですけど…」
少しだけ僕なりにうまく解釈できないところがあったので質問してみた
すぐにパクさんが丁寧に状況や展開を説明してくれた。
メモを取りながらも…正直、心ここにあらず状態だったのは否めない。。。
すみません。真剣な打ち合わせなのに珍しく落ち着かなかった。
ヒョンが気になってた…。
僕は、世間では最強って言われてるけど、実はヒョンには最弱なんだ
そんなことパクさんに伝える理由はないけど…(笑)
スケジュール通りだとあと30分ほどで終わる予定だった。
脚を組みかえるタイミングで、今度は部屋の掛時計を何気なく見てみた。
もう少しだ。。。ふぅ。シナリオは一通り目を通した。。
ドンジュでもモモでもない、ちょっと変わった役柄とストーリー。
なんだか急に不安になってしまった。演じきれるのか…?
ダメだ、もと集中しろよ。…自分に言い聞かせていた。
「ところで、チャンミンさん。
ドラマのおおまかな流れは把握されたと思いますが、いかがでしょうか?」
「えっ、はい。そうですね。そんな感じです。」
(ほんとにおおまかだった)
「それなら安心です。では、少し早いのですが、本日はここで一区切りさせていただきたいと思うのですが…。」
(え?)
「…何か不都合でも…?」
(いきなり?)
「今日は当方の勝手で時間がずれてしまいましたし、この後のご予定もおありかと思いまして…」
(え…?)
「あ、いえ、大丈夫ですよ。特に何もありませんので、お気遣いなく。」
(これが社交辞令ってやつ…?)
「はぁ、そうでしたか。実は先ほどの別件で話をした者が、取材から帰国しまして…空港でユンホさんをお見かけしたと言っていて…」
ドックン…鼓動が鳴ったのと同時に「ヘッ?」
無意識に動揺を隠そうとしたのか声が裏返ってしまった。
「あ、ご存知なかったですか?」
「え、ええ。はい、マ、マネージャーからの連絡もないですし…。」
(マズイ、動揺が顔に出ているかもしれない)
「そうでしたか、でも無事に帰国されたようで何よりですね。」
(ん?)
「…アハハ。そうですね。お気遣いありがとうございます。」
(で?)
「では、そういうことですので、これで失礼させていただきます
次回もよろしくお願いいたします。」
(そ、そういうことって?)
「あ…、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
(こんな展開あり?)
マネージャー様によろしくと言われ、恐縮してしまった。
あいつ、なんでいないんだよ!カッコつかないだろ。マジでイラっとした。
結局、なんだかよくわからないままそういうことになってしまった。
次回のスケジュール確認をして、部屋の外でふたりを見送った。
…ふぅ~…なんだか妙だ。
誰もいない部屋、イスにドカっと座りこんで頭をぶるぶると振った。
少し残っていたミネラルウォーターを一気に流しこんだ。
飲み終わったペットボトルをいつものようにつぶしながら、ふと思った
やっぱり…パクさん、気がついてた…?
いや、受信音に気がついてたとしても…
誰からだなんてわかるはずない。
そうだ、ただ気を遣ってくれただけ、うん。きっとそうだ。
若干、ふにおちなかったけどそう思うことにした。
よし!さぁ、帰ろう!
ヒョンにラインライン…
あ!…(ニヤリ)そうだ、突然行って驚かせてやろう。
ヒョンのびっくりする顔が浮かぶようだった。よしよし。
クックック…。
ん?…?
てか!マネ君どこだ?!帰って来てないじゃん!おっ!
どこ行ったんだ、あいつ。てか、帰れないじゃん!
薬局ってどこまで行ったんだよ。ったくもぅ。
あっ、頭痛薬ならいつも持ってること忘れてたよ。
ごめん、渡せばよかったな…でも今更だな。
しかし、仮にもトンバンシンギのマネージャーだろっ!
最強様をひとりにさせてどうなってんだよーーーっ!なんてな。
えっと、マネ君の番号はと…。
ガチャッ。
あっ、戻ってきたなっ。
ノックも無しかよ。チッ。礼儀知らずだな。
パーカーのポケットに両手を突っ込みながら振り返った。
「おい、いったいどこまで行って…た………???」
ハッ…思わず息をのんだ。え???
「ヒョ、ヒョン?!」
黒縁の大きな眼鏡をかけたボサボサ頭でジャージ姿のヒョンだった。
腕を組んだドヤ顔のヒョンがドアにもたれて立っていた。
「な、なんで??」
…立ちすくむ僕にゆっくり向かってくる、大きな体。
無精ひげとまっすぐな瞳。。。
いつもの優しい笑顔が近づいてくる…。
ヒョンだ…ほんとにヒョンだ…。
…ねぇ、ヒョン。ひげくらい剃ってよ。
ジャージの衿が片方折れてるよ。相変わらずなんだから。。
そんなことどうでもよかったのに、いつもの癖でチェックしてしまった。
…だけど、身動きできなかった。
しかも少し震えている自分に気づく。(なんだ、これ)
「チャンミナ!」
その声と同時に抱きしめられて少しよろけた。。
よろけたはずみで思わずしがみついた僕を無言でまた強く引き寄せた。
ヒョンの鼓動が伝わってきた。
ダ、ダメだ、このままじゃ泣くかもしれない。
…「ヒョ、ヒョン。ちょ、ちょっと苦しいです」
(こんな時もこんなことしか言えなくて情けなかった)
そう言いながら大きな背中をゆっくりなでたあと、トントンした。。
「ヒョン?」
「…チャンミ~ン…会いたかった…」ちょっとかすれた声。
…ヒョンが泣いてる…?
そんなの反則だ。僕は必死でこらえてるのに。。。
「チャンミンチャンミン…」
僕を抱きしめたままヒョンの小さな泣き声が響く。
「ヒョン…何回も呼ばなくても聞こえてます」
(ヒョン、お帰り。会いたかった。)
そう言えばいいのに。
でも、そんな僕の心をヒョンは誰よりも知っているはずだ。
それでいい。
僕達はハグじゃなく、強く抱き合っていた。
まるで僕達の絆のように強くね…。
結局、びっくりさせられたのは僕の方だった。。。
…何が起こったのか理解できるまで少し時間かかったよ…。
マネ君、Thank You♪
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