「あっ・・
そうだ、、ワイン忘れてた
乾杯しなくちゃっ」
「お~
やっと乾杯出来るか
ここまでくるのに長かったなアハハ」
「はいっ
じゃ、乾杯しましょ!
ヒョンも座って」
腰に巻いていたエプロンの紐を緩めて大きくフ~~と息を吐き
ユノはドカッと僕の隣に深く座った
僕は2003年物のヴィンテージワインのコルクを抜いて
ヒョンのグラスと自分のグラスにそっと注ぐ
「じゃ、乾杯」
「おう、乾杯」
グラスを軽く近づけて
拳と拳をタッチさせて僕達はいつもの乾杯をした
12年熟成させたワインは口に入れた瞬間
最初は複雑な味が入り交ざって若干渋味も感じられたけど
舌でゆっくり転がせて含んでみると
喉越しを通ると共に濃厚な重みのあるコクの深さに変化した
単純でなはいその味わいは
12年という月日の流れの重さや奥深さを物語っている様だった
ワインを口に含んでは目を閉じて
その余韻をじっくりと噛み締めるユノ
そして小さく呟いた
「早かったよな」
ユノがそう一言切り出すと
2003年のワインと共に僕達は当時の事を少し振り返った
「はい
早かったけど長かったです。
あっという間ではなかったですね
色んなことがあったし…」
「うん
本当に色んなことがあった。
俺さ……
練習生になってこっちに一人で来た頃
あの時は何も怖いものとか無くてさ
チャンミナは?」
「僕は怖いことだらけでした。」
「そっか
まぁ、そうだよな
普通の生活とは一変するわけだし
俺からするとスカウトってあの時は羨ましい限りだったけど
それゆえ心の負担はあったんだよな」
「 最初は……
本当に大変でした
でも、この世界に入って色々経験していくうちに
本当に怖い事っていうのが段々と見えてきて
僕のあの時の怖さなんて比較にはならなかったんだなって」
「あ、それ
俺も分かる気がする」
「はい
こういう仕事をしていると特に普通の感覚を見失いがちで
もし、その状況に慣れきってしまったら
周りも何も見えなくなってしまうんじゃないかって…
でも、その境界線が時々
見えなくなったりする時があるじゃないですか」
「慣れてしまう怖さか…
生きてる限りはずっと付きまとうんだろうな」
しばらく会話が止まるとグラスを傾けて
ユノが思い出した様にクスクスと小さく笑う
「なんですか??」
「ん?
いや、初めてチャンミナと出会ったときの事
思い出しちゃった」
「グループ結成て事務所に集められた時?」
「そう、
チャンミナ凄く緊張してて俺に挨拶するのに
真っ直ぐ立ってお辞儀したままなかなか顔を上げなかったよね」
「そうでしたっけ?」
「そうだよ!
こんな風に」
椅子から立ち上がると直立不動になったユノは
深く頭を下げて当時の僕のマネをする
「ちょっと、、
それはオーバーじゃないですか??
僕そんなにカチカチでした?」
「いや、もっとかな?
はっきり覚えてるよ俺。
顔を上げても下ばかり向いてて俺の目を見ようとしなくてさ
最初はこいつやる気がないのかなとか思ったけど」
「あ……
僕、あの時かなり緊張してて
僕だけ何だかド素人な気がしてたし
自信もなかったのは確かで…
でも、決して遊び半分な気持ちや
やる気がないとかじゃなかったです」
「知ってる。
俺がちょっときつい事言ったらチャンミナ物凄い目で睨み返したろ?
その時、こいつは本気だってすぐに分かった。
だからその夜すぐにチャンミナだけを呼び出したろ俺」
・・あ、バックダンサー時代のビデオ
数時間に渡って見させられたんだっけ
「こいつには絶対に見せておかなくちゃって思ってね」
「僕、あの時、ヒョンに呼び出されて
暴力奮われるのかと思いました」
「アハハ
そんな訳ないだろ
俺は昔から平和主義者なの!
でも、殴られるかもしれないって思ってたのに来たんだろ
やっぱり根性あるよチャンミナ」
「内心はドキドキでしたよぉ
何されるのかと思ってて・・」
「そう?
じゃ、襲っちゃえば良かったかなぁ
惜しかったなぁ~」
「な////
なに言ってるんですか!」
「俺はチャンミナの第一印象は
礼儀正しくて女の子みたいに可愛い子だなって思ったよ
睫毛が長くて真っ黒い瞳がいつもきらきらしててさ
メイクしてるみたいに唇なんかピンクで
男にしとくのは勿体ないなーとか。」
「嬉しくありません/////」
「まぁ、今も相変わらず可愛いけどね♡ 」
・・・・もう//////
そんな事を言ったかと思えば
僕の肩に腕をまわしてぐっと引き寄せると
ユノは甘えたような目で僕を見て
自分の頬を僕の耳のあたりに密着させる
ほんのり赤らめたユノの頬は温かくて
話すたびに微かに息がかかり僕の耳朶はあっという間に熱を持った
ユノは酔うと超ご機嫌で
いつも以上にやたらとスキンシップが多くなる
だから僕は時々心配になって
外出先での飲酒と聞くといつも気が気でない
「ヒョン・・・」
「なぁにチャンミナ♡ 」
「他の人にこんなことしちゃだめだよ」
「こんなことって?」
「……だから、
こんな風に身体を密着させたりとか……」
「普通でしょ?」
「ヒョンにとっては普通の事かもしれないけど
一般的には普通ではないですよぉ
好意があると勘違いされたらどうするんですか?」
「そう?そんな風に思わないんじゃない?」
「ヒョンにその気がなくても人によって取り方は様々だから
そういうことも全く無いとは言えないって事です」
「そうかなぁ・・」
ユノは少し唇を尖らせて頬っぺたをプクッと膨らませると
横目で僕を睨むようにして
「あのね、
普通じゃないっていうのはさ」
そう言い出すと
僕の肩にまわしていた腕を更に強く引き寄せては
自分の唇を僕の唇に柔らかく重ねた
そして舌先で僕の下唇を軽くペロッと舐めると
ニヤッと笑って
「普通じゃないってのはこういうのだろ?」
・・・・・え
一瞬何が起こったのか理解出来なかった僕は
唖然としてしばらくそのまま固まった
ユノは手のひらを僕の目の前で上下に振ると
「チャンミナ??
生きてる?」
「・・・あ」
「チャンミナの唇あさりの味がした♪
そのまま食べたいくらいに美味しいし…
あはっ♡ 」
「もうっ/////
だからーー、、」
「分かってる分かってる
チャンミナの言いたいことよーく分かってるからね♡」
・・・・ほんとに
ユノは分かってるのかな・・・
そのいたずらっぽい笑顔さえ
こんなに人の心をときめかせることを・・・
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